ひと山越えた
ロンドン大学に入学してから3年半を超えた。
ロンドン大学に入学した理由の一つは、卒業した大学の物理学専攻時代に中途半端で終わった数学の勉強のやり直しである。
解析と線形代数。とくに線形代数。
期末試験を目前にして、すでに一つの峰を超えた感覚がある。
例えば3次元空間中の2次元平面の法線とゼロ空間とレンジが対称行列によって明確に結びつく。
また例えば行列のレンジへの正射影は回帰直線のパラメータを導き、代数と統計学を繋げる。
決してProficiency のレベルではないだろうが、それでもロンドン大学入学以前には想像できなかったような深く広い世界を知ることができた。
本来この高みには20年前の学生時代に到達していたかったが、ま、しょうがないか。
人生の、ずっと停滞していた部分が解消された。そしてここからさらなる高みへ行ける。
物理学も制御工学も金融工学も統計学も。
欲しかったのはこの先の人生を楽しむための土台と、その土台を築き上げたという今のこの充実感で、それは学位以上の価値である。
期末試験が始まる。
2時間というひどく短い時間内に、ひどく込み入った数式の中から落ち着いて取っ掛かりを見つけたり、やけにシンプルな数式からやけに深入りした概念を引っ張り出す作業になるだろう。
ここを乗り切ると、学位までの道のりは終盤へ。
当日は冷酷な数学マシーンと化す。
赤点取った去年とは段違いの実力をみせちゃるゼ。